令和6年5月31日 『BHN桑原基金寄付講座』 :第7回 「防災・減災におけるICT」

2024年6月12日(水)9:56

 

2024年度前学期 「SDGsを支える情報通信論」

4月12日(金)からスタートしている本講座の7回目となる授業が、5月31日(金)に電気通信大学(以下、電通大)で実施され、対面とオンラインによる授業形式で進められ、この日は教室に7名、オンラインで3名の学生が出席しましたが、後でビデオによるオンデマンドで受講する学生もいます。

 

授業開始の挨拶をする由良 憲二名誉教授(電通大)

 

今回は、BHNの副理事長である海野 忍講師により、「防災・減災におけるICT」について熱のこもった講義が行われました。

 

地震のメカニズムについて実演して説明する海野講師(BHN副理事長)

 

☆ 講義の内容

1.日本の災害状況

まず、地震はどのようにして起こるのか、地震発生のメカニズムをプレートに模した道具を使用して説明がありました。また、今後発生するであろう南海トラフ地震の予測と内閣府・防災担当の防災対応検討ガイドラインデータに基づいた、BCP(事業継続計画)の説明があり、東日本大震災や能登半島地震での発災時の様子(津波や液状化現象、建物の倒壊等)が動画を使いながら学生たちに話され、地震発生から津波到達までの間に素早く避難することが大切であることが話されました。

また、東日本大震災ではNTTグループの設備被災状況及び、津波災害に強いまちづくり(より良い復興/創造的復興= Build back Better)の事例が紹介され、被災地域における安全安心の確保に向けた取り組みが紹介されました。

2.日本の防災・減災対策

防災3助(自助・共助・公助)の考え方と、国の防災計画、防災対策例、首都圏外郭放水路の仕組みと設備等が紹介され、SNS等での情報セキュリティへの意識について国別でのデータを基に災害発生時の偽・誤情報への注意が必要との話がありました。 

3.防災・減災用ICTの事例

行政による防災・減災情報伝達の仕組みや、日々発せられる様々な緊急警報が紹介され、NTTによる情報通信の強靭化と防災対策や、移動通信網の対策として発災時に他のエリアから移動電源車による電力提供の応援が可能なことが話されました。

現在、日本ではICT測位による地震・津波予測、被災物・被災者探索の技術開発が進められており、受講していた留学生の中には深くうなずく学生もいました。

4.ICTを活用したこれからの防災・減災

発災時にいち早く避難する情報を得るため、センサーを使った検知システムの事例として地滑り検知システムが紹介されました。

また、クラウドサービスを利用する事例として、気象庁と自治体のクラウドの利用が紹介されました。気象庁のシステムでは、豪雨などの最新の気象情報がスマートフォンで取得可能になります。自治体での活用としては、クラウドにデータを保存することにより、自らの局舎が被害にあっても住民情報の消失を防ぐことができるそうです。

防災面でのAI活用例として、まずはAIの歴史からDeep Learning技術を用いて衛生画像を解析し、土石流検知や線状降水帯による風水害予測等への活用について話され、最後はDX(Digital Transformation)時代における様々な技術が紹介されました。

 

質疑応答の時間に質問をする学生

 

講義後質問をする三木名誉教授(電通大)

 

質問への回答をする海野講師(BHN)

 

講義は終始英語でおこなわれ、教室には海外からの留学生の姿もありました。

最後に海野講師のパワーポイントで印象的だった一文として、内閣府が考えるAI技術の中で、「災害が多発する一方、少子高齢化により人手不足が進む日本おいて、AIを活用した避難支援、人手不足解消、迅速な災害対応に向けた研究開発が進むことにより、今後、南海トラフ地震等の巨大地震・スーパー台風や線状降水帯による風水害による被害を軽減し、早期復旧を実現することが期待されています。」というものがありました。少子高齢化というテーマは、日本の重大な問題の一つですが、この日、授業に参加した留学生の皆さんは自国での災害に置き換えてICTの活用法を考えている様子でした。

 

     

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